定期預金は解約できるか

1.「定期預金は解約できません」と言われた
社長「資金繰りが厳しくなってきたので、メインバンクに定期預金の中途解約を申し出たんです。」
社長「そうしたら『定期預金は満期がこないと解約できない』と断られました。これって、本当に解約できないんですか?」
安田「いえ、解約はできます。」
安田「ただ、銀行が定期預金の中途解約を渋るというのは、今も昔もあまり変わっていません。」
安田「資金繰りに困った社長が、こっそり窓口で定期を解約しようとしたら、ストップをかけられて支店長室に呼ばれた――そういう話は珍しくないんです。」
2.銀行の狙いは「保全」
社長「なぜ銀行は解約させたくないんですか?」
安田「多くの場合、狙いは『保全』です。担保に取っていなくても、実質的には『見合い担保』として扱っているわけです。」
社長「見合い担保というと?」
安田「期限の利益を喪失したとき――要するに会社が倒れたときに、借入金と定期預金を相殺できる、という意味です。」
安田「ですから、保全を第一に考えていない相手には、銀行は『定期を解約せずに、融資で対応させてください』と言ってきます。」
3.法的には「解約できる」が原則
社長「でも、担保ではない定期預金を中途解約できないというのは、なんとなく変ですよね。」
安田「その通りです。」
安田「定期預金規定には『この預金は、当行がやむを得ないと認める場合を除き、満期日前に解約または書替継続することはできません』という条項が入っています。」
安田「ただ、商習慣としては定期預金は中途解約できるのが当たり前です。」
安田「2006年には公正取引委員会から『担保ではない定期預金の解約に応じないのは独占禁止法上、問題がある』との見解も公表されています。」
4.解約交渉のポイント
社長「ということは、粘れば解約してもらえるんですね?」
安田「そうです。粘り強く交渉すれば、通常、銀行は解約に応じます。」
安田「銀行から『融資で対応したい』と言われたら、『金利がもったいない』と返してください。それで大体話は進みます。」
社長「ただ、解約してしまうと、その後の関係はどうなりますか?」
安田「正直に言うと、その銀行からは次の融資を受けにくくなる可能性があります。」
安田「銀行にとって、解約された定期預金は『保全』の喪失でもあるからです。」
5.現実的な対応策
社長「では、これから定期預金を作るときは、どうすればいいでしょうか?」
安田「結論を言えば、定期預金はいろいろ面倒なので、次のどちらかが現実的な対応策です。」
・借入のない金融機関で作る
・定期預金自体をやめてしまう
安田「借入のある銀行に定期を置いてしまうと、いざというときに自由に動かせません。最初から作らないか、別の銀行で持っておく方が、資金繰りの自由度は高くなります。」
6.銀行に与える「飴」は他にもある
社長「そうは言っても、銀行とのお付き合いで、何か『飴』を与える必要はありますよね?」
安田「そこは大事なポイントです。銀行に与える飴は、定期預金以外にもたくさんあります。」
安田「融資に関するものとしては、こういったものがあります。」
・担保不動産
・売上の入金口座
・保証協会付き融資
安田「融資以外、つまり金融機関の手数料収入につながるものとしては、こんなところです。」
・投資信託等の購入
・オーナーの遺言信託
・従業員の給料振込口座の指定
・住宅ローンの推進
社長「どの銀行に何を渡すか、考え方はありますか?」
安田「基本のスタンスは、メインに多くの飴を与え、準メインにも一定の飴を与え、下位行にはほとんど与えない、というものです。」
安田「よく見かけるパターンとしては、担保不動産はメインに、保証協会付き融資は準メインに、という分け方があります。」
安田「金融機関によって求めているものが違う、という点も意識するといいと思います。」
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