金融機関が求めているのは「基本の徹底」

1.「決算報告に来てくれるのは御社だけです」
社長「銀行からの評価を上げるには、何をすれば一番効果があるんでしょうか?」
安田「最近、私が顧問先の決算説明で西東京の某信用金庫を訪問したときの話をします。」
安田「支店長から、こんなことを言われました。『このエリアでは、毎期きちんと資料を作り、決算報告に来てくれるのは御社だけです』と。」
安田「さらに『貸出先からキャッシュフローの説明を受けることは、滅多にありません。素晴らしいです』とも。」
社長「たったそれだけで、そんなに評価されるんですか?」
安田「そうなんです。金融機関が求めているのは、ものすごく高度な財務分析ではなく、資料を作って正確な情報を伝えるという基本動作です。」
2.「A3用紙1枚」で信頼は築ける
社長「具体的には、どんな資料を出せばいいんですか?」
安田「私が顧問先で使っているのは、A3用紙1枚にまとめた資料です。中身は2つだけ。」
・前期決算の振り返り
・今期の損益・キャッシュフローの予想
安田「キャッシュフローの予想と聞くと難しそうですが、税引後利益に減価償却費を足すだけの単純な計算です。」
安田「それだけで、企業の信頼は高まり、金融機関との関係は強化されます。」
安田「決算書を銀行に送るだけで済ませている会社は、次回から『決算報告資料』を作成してみてはいかがでしょうか。」
3.「経営者保証なし」というパラダイムシフト
社長「最近は、銀行との付き合い方も変わってきていますね。」
安田「大きく変わったのは、銀行が経営者の個人保証を取らなくなったことです。」
安田「直近のデータを見ると、その変化の大きさが分かります。」
メガバンク:新規融資の約6割が保証なし
地方銀行:6〜7割が保証なし
日本政策金融公庫:5〜6割が保証なし
信用金庫:3〜5割が保証なし
安田「経営者保証が当たり前だった時代から、大きな転換が進んでいます。まさにパラダイム転換です。」
4.「中小企業だから」の甘えを捨てる
社長「経営者保証なしになると、何が変わるんですか?」
安田「『経営者保証なし』が当たり前ということは、裏を返せば、こうした条件を満たす会社が評価されるということです。」
・公私混同がない
・情報公開に積極的である
・財務内容が良い
安田「ですから、これからは『中小企業だから仕方ない』という甘えを捨て、ガバナンス強化に取り組むことが重要です。」
社長「資料を作って情報をきちんと伝える、公私混同を避ける、ガバナンスを整える――どれも特別なことではないですね。」
安田「そうなんです。『基本の徹底』――これこそ、いま金融機関が中小企業に求めているものです。」
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