中小企業の経営改善に強い財務参謀│安田順

中小企業の経営改善に強い財務参謀│安田順

【対応地域】 全国(特に、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県、栃木県)

無担保融資も無担保ではなくなる──根抵当権の怖さ(銀行交渉)

銀行交渉

1.根抵当権は普通の感覚では理解できない

社長「銀行から根抵当権の話が出てきました。抵当権とどう違うんですか?」

安田「抵当権に比べると、根抵当権はかなり複雑で難解です。普通の感覚では理解できないようなことが起こるので、注意が必要です。」

安田「今日は2つの実例で、根抵当権の怖さをお話しします。」

2.【ケース①】完済しても抹消されない根抵当権

安田「まずは、社長個人を債務者とする次の根抵当権を見てください。」

極度額   3000万円
債権の範囲 銀行取引、手形債権、小切手債権
債務者   社長個人
債権者   X銀行

安田「この根抵当権は、社長が個人名義でX銀行から自宅のリフォーム資金を借入する際に設定したものです。」

安田「その後、社長個人の借入はすべて返済されたので、当然、抹消できると思いますよね。ところが、X銀行は抹消登記に応じてくれません。」

社長「なぜですか?個人の借入は完済しているのに。」

安田「会社の借入に付随する『社長の連帯保証債務』を、この根抵当権が担保しているからです。会社の方には、まだX銀行の借入が残っていました。」

社長「でも、登記上は会社の名前はどこにも出てこないですよね?」

安田「その通りです。ところが、債権の範囲にある『銀行取引』が曲者です。」

安田「債権の範囲を『銀行取引』としてしまうと、X銀行との取引で生じたあらゆる債権が担保対象になります。社長個人の連帯保証債務までも、この根抵当権が押さえてしまうのです。」

3.【ケース②】無担保のプロパー融資が「空き枠」に繰り上がる

安田「もう1つのケースをお話しします。」

安田「A社は、自社ビルに極度額4000万円の根抵当権を設定し、メガバンクのM銀行から保証協会付き融資3000万円(有担保融資)を借入れました。」

極度額   4000万円
債権の範囲 銀行取引、手形債権、小切手債権
債務者   A社
債権者   M銀行

安田「その後、返済が進み、保証協会付き融資の残高は1000万円まで減りました。」

安田「そこでA社は、上記の根抵当権を使って再度、保証協会付き融資を借入れようとしました。ところが、M銀行から融資を断られてしまったんです。」

社長「極度額に空きが3000万円もあるのに、なぜ?」

安田「A社は、保証協会付き融資とは別に、M銀行から無担保のプロパー融資2000万円を借りていました。」

安田「この無担保のはずのプロパー融資が、根抵当権の空き枠に繰り上がって担保されていたからです。」

社長「無担保で借りたのに、いつの間にか担保がついていたということですか?」

安田「そうなんです。銀行の論理は、『無担保のプロパー融資が、保証協会付き融資の根抵当権の空き枠を使い切っている。だからこれ以上は借りられない』というものです。」

4.根抵当権を設定するときは「最悪のケース」を想定する

社長「かなり無茶な話ですよね。銀行と争えないんですか?」

安田「残念ながら、この点で銀行と争っても、なかなか勝てません。」

安田「根抵当権には、債務者の認識に関係なく、銀行取引で生じた債務であれば何でも担保してしまうという怖さがあります。」

安田「設定する前に、『将来どこまで効いてくるか』をしっかり想像しておくことが大事です。」

安田「特に、債権の範囲に『銀行取引』と書かれている場合は要注意です。今回のような“想定外”の担保化が起こり得る、と覚えておいてください。」

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