「債務償還年数」とは何か? ── 銀行が最も重視する財務指標
1.債務償還年数とは
社長「債務償還年数という言葉をよく聞くんですが、どういう指標ですか?」
安田「名前の通り、借入金を何年で返せるかを表す指標です。ざっくり言うと、『借金÷1年分の利益』で計算します。」
社長「シンプルですね。」
安田「考え方はシンプルです。銀行は、この債務償還年数が10年以内におさまっている会社を正常先と判断します。」
社長「10年が基準なんですね。」
安田「はい。銀行員の感覚として、『借金の返済に30年かかるような会社は危険だ。融資には応じられない』と考えます。貸付金の返済期間は10年くらいと相場が決まっているからです。」
2.決算書の2大ポイントのひとつ
社長「銀行はこの指標をかなり重視しているんですか?」
安田「信用格付への影響が非常に大きく、『決算書の2大ポイントのうちのひとつ』と言われています。」
社長「もうひとつは何ですか?」
安田「実質自己資本です。つまり、債務超過かどうかですね。」
安田「この2つ、債務償還年数と実質自己資本が、銀行が決算書を評価する際の最重要ポイントです。」
社長「リスケとの関係はどうですか?」
安田「リスケした会社では、債務償還年数10年以内がリスケ卒業の目安になります。銀行は経営改善計画を作る専門家に対して、『計画5年目で債務償還年数が10年以内になる計画を立ててほしい』と注文してきます。」
3.計算式を押さえておこう
社長「計算式は難しいんですか?」
安田「一見難しく見えますが、使うのはBSとPLの数字だけです。」
債務償還年数 = 要償還債務 ÷ キャッシュフロー
要償還債務(BS)= 銀行借入金 - 正常運転資金 - 現預金
キャッシュフロー(PL)= 経常利益 + 減価償却費 - 法人税等
正常運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
社長「要償還債務というのは、借入金そのものではないんですね。」
安田「はい。借入金の総額から、正常運転資金と現預金を差し引きます。正常運転資金は事業を回すために常に必要な資金なので、実質的に返す必要がないという考え方です。」
社長「キャッシュフローのほうは?」
安田「経常利益に減価償却費を足して、法人税等を引きます。これが1年間に返済に回せるお金です。キャッシュフローは直近2~3年の平均値を使います。」
社長「注意点はありますか?」
安田「正常運転資金の計算では、回収困難な売掛金や不良在庫を除かなければなりません。ここを甘く計算すると、実態よりも良い数字が出てしまいます。」
4.10年を超えたら即アウトではない
社長「うちの会社、10年以内は厳しいかもしれません……。」
安田「10年を超えたら即アウトではありません。金融機関の評価は、『10年以内は正常』『15年以内はおおむねセーフ』『20年を超えると不良債権』といったところです。」
社長「15年以内なら、まだ大丈夫ということですか。」
安田「はい。10年以内をすぐに実現できない場合は、まず15年以内を目標に計画を立ててみるとよいでしょう。」
安田「大事なのは、自社の債務償還年数を把握しておくことです。銀行は必ずこの数字を見ています。社長自身がこの指標を意識しているかどうかで、銀行交渉の説得力がまったく変わってきます。」
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