銀行のスタンスは「生かさず、殺さず」

1.中小企業は「元金返済」では倒産しない
社長「借金の返済に追われて倒産する中小企業って、本当に多いんですか?」
安田「多くの方はそう思っていらっしゃいます。ところが実際は、元金の返済で中小企業が倒産するケースは稀です。」
安田「銀行がリスケ(元金返済ゼロ)に応じてくれるからです。」
安田「実際、銀行返済をリスケしながら10年以上、経営を続けている中小企業は珍しくありません。あまり利益が出ていないので、返済額も少額です。それでも銀行は、リスケの延長に応じ続けています。」
2.倒産の分岐点は「利払いを継続できるかどうか」
社長「では、何が原因で倒産するんですか?」
安田「倒産するのは、営業利益の赤字(本業の赤字)や経常利益の赤字(利払い後の赤字)が続く場合です。」
安田「ここで重要なのは、銀行は利払い(利息の支払い)のリスケには応じないという点です。」
安田「利払いを止めると『延滞』になります。3か月延滞すると、保証付き融資は代位弁済、プロパー融資は債権回収部門に移管されます。延滞後も赤字が続く場合は、自己破産を申し立てることになります。」
安田「つまり、会社存続の分岐点は『利払いを継続できるかどうか』にあります。」
安田「PLでいうと、『営業利益 − 支払利息』の答えがプラスなら、利払いを継続できます。借金がどれだけ多くても、リスケで存続できる、ということです。」
3.【事例】リスケから抜け出せない中規模旅館
社長「利息の負担で利益が出ない会社って、どれくらいいるんですか?」
安田「想像以上に多いです。一例として、とある中規模旅館(リスケ中)のPLをご紹介します。」
売上高 550百万円
営業利益 17百万円
支払利息 △15百万円
経常利益 2百万円
安田「ご覧の通り、営業利益17百万円のうち、ほとんどを支払利息に持っていかれています。経常利益はわずか2百万円です。」
安田「こういうPLでは、借金を減らしてリスケを正常化するのは、まず不可能です。」
安田「しかし、銀行は年に1回、リスケの契約を巻き直すだけで、金利の引き下げにはいっさい応じません。」
4.銀行のスタンスは「生かさず、殺さず」
社長「銀行はなぜ金利を下げてくれないんでしょう?」
安田「リスケ先に対する金融機関のスタンスは、『生かさず、殺さず』だからです。」
安田「倒産させない程度には支援するけれど、利息はしっかり取り続ける。これが銀行にとっては一番儲かるからです。」
社長「会社にとっては苦しいですね。」
安田「苦しいです。先ほどの旅館は、楽天やじゃらんで高い口コミ評価を受けている人気旅館です。」
安田「ハード(設備)は古いけれど、ソフト(人材)は優秀。ところが、上記のPLでは給料を上げられず、場合によっては長時間労働を強いることにもなります。」
安田「過剰債務の中小企業を救済する制度はたびたび打ち出されます。ただ、根本的な解決には至らず、結局はリスケもどきで終わってしまうケースが多いんです。」
5.「金利上昇」のストレスを今のうちにかけておく
社長「ウチは0.5%で借りているので、利息の心配はないと思っているんですが。」
安田「そう思っていらっしゃる方は少なくありません。ただ、この前提はこれから危うくなる可能性があります。」
安田「地域金融機関の統廃合が進んでおり、これは供給減らしを意味します。いずれ金利は上がっていくと考えるのが自然です。」
安田「早めに『金利上昇のストレス』をかけて、自社の支払利息がどう変化するかをチェックしておくことをおすすめします。」
安田「『金利のある時代』を経験していない社長は、特に意識しておく必要があります。」
安田「金利が上がってからでは、借入を増やして手元現金に余裕を持たせる、という打ち手も取りにくくなります。今のうちに備えておきましょう。」
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