融資が止まっても事業を継続できるか

1.銀行融資が止まっても商売を続けられますか?
社長「安田さん、突然ですが、ウチの会社って融資が止まったらどうなるんでしょうか?」
安田「いいご質問です。『銀行融資が受けられなくなっても、商売を続けられるか?』――これは、会社を維持していくうえで、とても重要な問題です。」
安田「『考えたこともない』という社長も多いと思いますが、一度真剣に考えておく価値はあります。」
2.【相談事例】融資もリスケもダメで、会社を畳むしかない?
安田「先日、資金繰りに悩む社長から、こんな相談電話を受けました。」
社長「その方、どんな状況だったんですか?」
安田「ある商品の仕入販売をしている会社でした。赤字が続き、資金繰りは危機的な状況。借入が多く、銀行から『これ以上は貸せない』と言われていたそうです。」
安田「私は『融資が受けられないなら、返済をリスケして資金繰りを回すしかありませんね』とお伝えしました。」
安田「するとその社長は、『リスケすると、銀行はいよいよ融資に応じてくれなくなりますよね?』とおっしゃる。」
安田「『ケースバイケースですが、そうなることがほとんどです』とお答えしたら、『じゃあリスケは無理です。ウチは融資を受けないと、仕入ができないので』と。」
社長「なるほど、ジレンマですね。」
安田「そこで『いま持っている在庫を処分して、おカネを作れませんか?』と尋ねたのですが、『無理です。不良在庫なので、売っても入ってくるカネはわずかです』と。」
安田「『県の制度融資は使えませんか?』とも聞かれたので、『制度融資といっても、結局は保証協会の審査で決まります。すでに目一杯借りているのなら、難しいですよ』とお伝えしました。」
安田「最終的にその社長は、『リスケも融資もダメなら、もう会社を畳むしかないですかね?』とおっしゃっていました。」
3.なぜ、ここまで追い詰められたのか
社長「そこまで追い詰められた、根本の原因は何でしょう?」
安田「銀行融資なしでは商売を続けられない経営体質だったからです。」
安田「商売は仕入が先ですから、一定のおカネが必要になるのは分かります。」
安田「しかし、新規融資を受けないと仕入ができないというのは、銀行に命綱を握られているようなものです。」
安田「じつは、中小企業ではこのパターンは珍しくありません。」
安田「たとえば、銀行から工事の立替資金を借りている建設会社、夏物衣料の仕入資金など季節資金を借りている会社。こうした会社は、資金繰りが悪化すると、まったく同じ状態に陥ります。」
安田「本業の回転資金を銀行に依存している会社は、融資を断られた瞬間に、仕事が続けられなくなるのです。」
4.「最悪リスケすれば大丈夫」な現金を持っておく
社長「対策としては、どうすればいいですか?」
安田「平時から、『最悪リスケすれば大丈夫』と言えるくらいの現金を持っておくことです。」
安田「具体的には、『銀行返済をリスケすることになった』と仮定したうえで、『自力で商売を続けられるだけの現金』を持っているかをチェックしてみてください。」
安田「借入金で仕入を回しているなら、自力で1〜2回転分の運転資金を確保できているか、という視点で見直すといいでしょう。」
5.「つなぎ資金」のリスケは銀行が応じない
社長「そういえば、つなぎ資金もリスケできるんですか?」
安田「ここは大事なポイントです。つなぎ資金のリスケに、銀行は応じません。」
安田「つなぎ資金とは、売上などの入金予定が確定していて、その入金までの不足資金を補てんするために貸し出される資金のことです。」
安田「入金が確定している以上、銀行は『ヒモ付きのカネなんだから、リスケは許さない。絶対に返せ』と言ってきます。」
安田「一方、つなぎ資金以外の借入は、きちんと交渉すれば、1〜2年、元金返済をゼロにすることも不可能ではありません。」
安田「自社の借入のうち、どれがつなぎ資金に該当するか――この区別を、平時から把握しておきましょう。」
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