銀行が認める節税、認めない節税
1.銀行員は節税に熱心な社長を嫌う
社長「銀行に決算の説明をするとき、節税の話はしてもいいんですか?」
安田「基本的に、銀行員は節税に熱心な社長を『良い社長』とは考えません。」
社長「そうなんですか。」
安田「例えば、『本当は儲かっているんですが、税金を払いたくないから赤字にしました』と説明すれば、銀行員は渋い顔をします。」
社長「でも、実際に儲かっているなら……。」
安田「銀行員は会社が儲かっているかどうかを決算書で見るしかありません。『本当は儲かっている』と言われても、対応しようがないんです。」
2.キャッシュアウトをともなう節税は最悪
社長「節税にもいろいろありますよね。どういうものが特に嫌われますか?」
安田「一番嫌われるのは、キャッシュアウトをともなう節税です。例えば、『節税のために車を買った』と銀行に説明すれば、社長としての資質を疑われます。」
社長「税金は減りますけどね。」
安田「必要のないものを買ったなら、ただの無駄遣いです。経営的には『節税のためにお金を使った』という説明はあり得ません。」
安田「生命保険を活用した節税も同様です。法の盲点をつくような節税策であっても、そこにお金を使っている社長の印象は悪くなります。」
3.期間損益を歪める節税にも注意
社長「お金が出ていかない節税ならいいんですか?」
安田「キャッシュアウトがなくても、期間損益を歪めるような節税は銀行から警戒されます。」
社長「例えばどんなケースですか?」
安田「『前期は利益が出すぎたので、税理士に相談して、これまで貯蔵品に計上していたものを消耗品費で処理した』といったケースです。」
社長「会計処理を変えたということですね。」
安田「はい。会社は一定の会計処理を毎期継続するのが原則です。これを継続性の原則と言います。」
安田「それなのに、『利益が出すぎたので……』と言ってしまうと、場当たり的に決算書を作っている印象を与え、決算書の信憑性を疑われてしまいます。」
社長「どう説明すればいいんですか?」
安田「余計なことは言わずに、『税理士のアドバイスで会計を適正化した。今期からはこの処理を継続していく』と説明するのがベターです。」
安田「銀行には『節税のために××した』『利益が出たから××した』という話は通りにくいので、節税という言葉は安易に使わないほうがいいんです。」
4.銀行が認める節税とは
社長「じゃあ、銀行が認める節税もあるんですか?」
安田「あります。含み損のある資産を処理する節税(繰越欠損金の活用)です。」
社長「含み損のある資産というと?」
安田「例えば、購入時より値下がりした上場株を持っているとします。この株を売却すると、有価証券売却損が出て、経常利益が赤字になる。しかし、税金が減り、キャッシュフローは増加します。」
社長「赤字になっても大丈夫なんですか?」
安田「銀行がPLで重視するのは、本業の利益が上がっているかどうかです。本業と関係のない一時的な損失で赤字になっても、あまり問題視されません。」
安田「銀行には、次の3点を説明すれば大丈夫です。
(1)有価証券売却損は一時的なもので、今後は発生しない
(2)売却損を除けば経常利益は黒字である
(3)売却損によって税金が減り、キャッシュフローは増加する」
社長「なるほど。他にも使えるケースはありますか?」
安田「はい。BSに含み損を抱えた資産があれば、損失を計上して損金で落とせないか、税理士に相談してみてください。具体的には次のようなものです。
(1)回収不能になった売掛金、貸付金、未収入金など
(2)販売不能になった在庫
(3)使用していない設備や機械装置
(4)値下がりした土地・建物、出資金、有価証券」
5.損失の計上場所と銀行への説明
社長「損失はどこに計上すればいいですか?」
安田「銀行はPLの経常利益を非常に重視しますから、損失はできるだけ特別損失に計上すべきです。」
社長「特別損失に入れられない場合は?」
安田「販管費や営業外費用に計上せざるを得ない場合は、『実質的には特別損失です』と銀行にきちんと伝えてください。」
安田「それから、売掛金や在庫の損失を計上する場合は、『不良債権や不良在庫を作ったのは過去のこと。今は大丈夫です』と説明することが大事です。」
社長「損失の原因は過去にあるわけですからね。」
安田「そうです。抱えていた膿を出し切っただけなので、今の業績とは関係がない。そう説明できれば、銀行も納得します。」
安田「ちなみに、銀行員はキャッシュフローという言葉に弱いので、『節税のために』というよりも『キャッシュフロー確保のために』と話すのがコツです。」
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