中小企業の経営改善に強い財務参謀│安田順

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【対応地域】 全国(特に、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県、栃木県)

社長として押さえておきたい「貸出金利の基礎知識」

銀行から金利の引き上げを要請されたとき、「はい、わかりました」とあっさり応じていませんか。

金利は交渉事です。「なぜその金利なのか」を問えるだけの知識があれば、上げ幅を抑えられるかもしれません。

そこで今回は、貸出金利の決まり方について、ざっくりと押さえておきましょう。

1.貸出金利はベースレートとスプレッドで決まる

社長「銀行から金利を上げたいと言われたんですが、そもそも金利ってどうやって決まるんですか?」

安田「貸出金利は、次の足し算で決まります。」

貸出金利 = ベースレート + スプレッド

安田「ベースレートは、基準となる金利です。短期プライムレート、TIBOR、長期金利などがあります。」

安田「スプレッドは、会社ごとの上乗せ金利です。信用格付、担保の有無、銀行間の競合、総合的な取引採算などで決まります。」

社長「信用格付で金利が変わるというのは聞いたことがあります。」

安田「はい。銀行は信用格付に基づく基準金利の一覧表を持っています。格付が低い会社ほど貸し倒れリスクが高いので、金利は高くなります。逆に、格付が高い会社ほど低くなります。」

安田「さらに、担保があれば金利は下がりますし、貸出期間が長くなれば金利は上がります。銀行間の競合や、融資以外の取引を含めた総合採算でも調整されます。」

社長「なるほど。ベースレートにいろいろな要素が上乗せされて、最終的な金利が決まるわけですね。」

安田「その通りです。では、ベースレートにはどんな種類があるのか、順番に見ていきましょう。」

2.短期プライムレート(短プラ)とは

社長「短プラという言葉はよく聞きますが、正確にはどういうものですか?」

安田「短期プライムレート(短プラ)は、日銀の政策金利や市場金利の動向を踏まえて、各金融機関が自主的に定める基準金利です。もともとは1年未満の短期貸出の最優遇金利という意味ですが、長期の変動金利の融資にも広く使われています。」

安田「融資の契約書には『短プラ+○%』と書いてあります。この○%がスプレッドです。」

社長「短プラが上がれば、自動的に金利も上がるということですか?」

安田「そうです。短プラは日銀の政策金利に連動するので、日銀が利上げを行うと、おおむね2カ月ほど遅れて上がります。」

安田「たとえば、三菱UFJ銀行の短プラは、2009年1月から15年以上も1.475%に据え置かれていました。それが2024年7月の政策金利引き上げを受けて1.625%に上がり、その後も日銀の利上げに連動して引き上げが続いています。」

社長「今後も日銀が利上げすれば、短プラは上がり続けるわけですね。」

安田「はい。短プラベースで借りている会社は、利上げのたびに金利が上がります。住宅ローンの変動金利も短プラがベースなので、影響は大きいです。」

3.TIBOR(タイボー)とは

社長「TIBORという言葉も最近よく聞きます。」

安田「TIBORは、Tokyo Interbank Offered Rate(東京銀行間取引金利)の略です。銀行同士が短期資金を貸し借りするインターバンク市場で使われるレートです。」

安田「TIBORに連動する融資は『スプレッド貸』と呼ばれ、契約書には『TIBOR+○%』と書いてあります。たとえば3カ月TIBORに連動する融資なら、3カ月ごとに金利が見直されます。」

社長「短プラとは何が違うんですか?」

安田「大きな違いは2つあります。まず、TIBORは毎営業日に変動する市場金利なので、金利の透明性が高い。短プラは銀行が自分で決めるので、透明性は低いです。」

安田「もう1つは、変動のスピードです。TIBORは市場動向に合わせて日々変わりますが、短プラは銀行の判断で段階的に改定されるので、動きが遅い。」

社長「銀行にとっては、TIBORの方が値上げしやすいということですか?」

安田「そうです。短プラの引き上げは銀行員にとって交渉の負担が重いのですが、TIBORなら市場が上がれば自動的に金利が上がります。最近は地銀が中小企業向け貸出で短プラからTIBORへのシフトを進めています。借り手としては注意が必要です。」

社長「スプレッド貸の場合、金利交渉ではスプレッドの部分が対象になるわけですね。」

安田「その通りです。TIBORの水準は全銀協TIBOR運営機関のサイト(https://www.jbatibor.or.jp/)で確認できますので、チェックしてみてください。」

4.長期固定金利と10年物国債利回り

社長「長期の固定金利はどうやって決まるんですか?」

安田「長期固定金利のベースレートは、10年物国債利回りなどの長期金利を参考に、銀行が独自に決定します。」

安田「短プラやTIBORと違って、固定金利ではベースレートとスプレッドの内訳が明示されません。借り手に知らされるのは最終的な貸出金利だけです。」

社長「10年物国債利回りが上がると、固定金利も上がるということですね。」

安田「はい。10年物国債利回りは、2023年には0.4%台でしたが、日銀の政策変更や国債買い入れの縮小により上昇を続けています。」

安田「注意していただきたいのは、日本政策金融公庫や保証協会付融資の固定金利にも影響が出ている点です。公庫の基準金利は、この数年で大幅に上がっています。」

社長「公庫の金利も上がっているんですか。それは知らなかった。」

安田「公庫は国の資金(財政投融資)を原資に融資していますが、その調達コストが国債利回りに連動するからです。以前は1%台で借りられたものが、今では3%を超えるケースも出てきています。」

5.金利交渉の前提として

社長「金利の仕組みがわかると、銀行との会話が変わりそうですね。」

安田「そうです。たとえば、銀行から『金利を1%から2%に上げたい』と言われたとき、『なぜ1%も上がるのか、ベースレートの上昇分はどれくらいで、スプレッドはどう変わるのか』と聞けるだけで、交渉の土俵が変わります。」

安田「まずは、自社の借入がどのベースレート(短プラ、TIBOR、固定金利)で借りているかを確認するところから始めてみてください。融資の契約書に書いてあります。」

社長「契約書を引っ張り出して、確認してみます。」

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