AI×音声入力で、銀行提出資料を作る
社長「今度、銀行に決算書を持っていくんですが、それだけでいいですよね?」
安田「決算書だけでもいいんですが、もう一枚、事業レポートを添えると格付けが変わる可能性があります。」
社長「え、そんなに違いますか?」
安田「銀行の格付けは、決算書の数字だけで決まるわけじゃないんですよ。経営者の考え方や事業の強み、将来の見通し──そういう数字に載らない情報でも、格付けの2割程度は決まると言われています。信用金庫だと、さらに比重が大きい。」
社長「でも、そういうことは口頭で話しているつもりなんですが…。」
安田「口頭だと、銀行員の稟議書に残らないんです。担当者が社内で説明するとき、材料がないと『特記事項なし』で終わってしまう。だから、こちらから資料を出す必要があります。」
1.A4・1枚の事業レポートを添える
決算書と一緒に提出するのは、A4・1枚にまとめた事業レポートです。
社長の頭の中にあることを、銀行員が稟議書に書ける形に整理するだけ。項目は6つです。
<事業の現状と今後の見通し>
(1)経営理念・ビジョン(何を大事にして経営しているか)
(2)当社の強み(なぜお客様は、他社ではなくうちから買うのか)
(3)前期の振り返り(売上・利益に影響した主な出来事)
(4)課題・問題点と対策(今いちばん困っていること、そしてその対策)
(5)今期の見通し(売上の見込み・投資の予定など)
(6)銀行への相談事項(融資の希望、条件の相談など)
各項目3〜5行で十分です。
2.質問に音声入力で答えるだけ
社長「でも、文章を書くのが苦手で…。どうすればいいですか?」
安田「書かなくていいんです。次の6つの質問に、音声入力でしゃべるだけです。」
(1)商売で一番大事にしていることは?
(2)お客さんがうちから買う理由は? 他社にはない強みは?
(3)この1年、売上や利益に一番影響した出来事は?
(4)今いちばん困っていることは? 何か手は打ってる?
(5)来期やりたいことは? 投資の予定や売上目標など。
(6)銀行にお願いしたいこと、相談したいことは?
コツは、とにかくしゃべること。脈絡がなくてかまいません。夜、一杯やりながらでもOKです。それだけでAIが仕上げてくれます。
3.実際にやってみた
架空の食品卸会社の社長になりきって、私がテストしてみました。
「当社の強み」の音声入力原文がこれです。
ええと。うちは配送が強いんですね。自社便で朝5時に出て、8時前には届けてる。大手は最低ロットがあるけど、うちは小口でも対応するんですよ。あと3温度帯を1台で回せるのは、このあたりだとうちぐらいかな。えー、それがですね結構あの、大手にはできないということですね。まあ、だから一番の強みというのは配送力と小口対応。まあ、あれですね。得意先は350件ぐらいです。
AIに整理させると、こうなります。
(2)当社の強み
自社配送便による早朝配送体制(午前8時前納品)を強みとし、保有する冷凍冷蔵車8台のうち4台が3温度帯(冷凍・冷蔵・常温)に対応。埼玉県南東部全域をカバーしています。大手卸が対応しにくい小口配送にも柔軟に応じ、個人飲食店を中心に約350先と取引。得意先構成は飲食店60%、給食20%、病院・介護施設20%で、介護分野は安定した収益基盤です。倉庫はHACCP対応済み。
音声入力では「配送が強い」「小口対応」としか話していません。「冷凍冷蔵車8台」「HACCP対応」はホームページから自動で補完された情報です。
4.作り方は3ステップ
(1)音声入力で話す(15分)
(2)自社のホームページをAIに読み込ませる(言い忘れの補完)
(3)「銀行提出用のA4・1枚レポートにまとめて」と命令する
合計20分でレポートが完成します。私のお勧めはClaudeですが、ChatGPTでもGeminiでも構いません。
社長「それなら私でもできそうです。」
安田「自社の強みを『言語化する』こと自体、銀行対策として有効です。でも実際にやっている会社はまだ少ない。AIのおかげで、一気にハードルが下がりました。思いついたことを脈絡なくしゃべれば、あとはAIがやってくれる。銀行提出資料に限らず、いろいろな場面で使える方法です。」
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