銀行に「貸し込まれる」とはどういう状態か?
こんな決算書の会社が、銀行から新規融資を受けられると思いますか?
X社の決算数値
●年商5億円
●借入金4億円
●債務超過▲5000万円
●2期連続の営業赤字
社長「債務超過では無理ですよね。2期連続赤字だし、年商5億に対して4億の借入は多すぎる。」
安田「常識的にはそうです。ところが、X社の翌期の決算書を見ると、地方銀行から5000万円の新規融資が実行されていました。借入が4.5億円に増えていたんです。」
社長「なぜそんな状態で借りられるんですか?」
安田「理由は一つ。社長と親族の個人資産(土地と定期預金)を担保に差し出していたからです。会社が債務超過でも、個人資産があれば、それを返済財源と見なして、銀行は融資を実行できてしまう。」
1.危機感のない社長
私が特筆すべきと感じるのは、こうした会社の経営者ほど、危機感を持っていないという事実です。
X社の社長に「なぜこんなに借入が増えたのですか」と聞くと、「そんなに多いですか?銀行は何も言っていませんが」という答えが返ってきました。
銀行は特に忠告せず、淡々と貸し続ける。だから社長も「まあ、こんなもんだろう」という認識になってしまう。
中小企業の社長は、他社の決算書を見る経験がほぼなく、借金について突っ込んだ話をする機会もありません。唯一の情報源である銀行が何も言わないと、それでいいと思ってしまうのでしょう。
2.「貸し込まれている」状態とは
私はこうした状態を、「貸し込まれている」と表現しています。
安田「本当に問うべきは、『会社の力で、その借金を返していけるのか』という点です。X社の借入が4.5億円で、仮に金利が2%だとすると、年間の支払利息は約900万円になります。」
社長「営業利益率が2%なら、売上5億円×2%=1,000万円ですね。」
安田「そうです。経常利益は1,000万円-900万円=100万円。営業利益の大半が利息で消えてしまう。本業では、4.5億円の返済など一生かかっても無理ということです。」
となると、「一体、何のために融資を受けているのか?」ということになります。ただ銀行を儲けさせているだけではないか。だから私は「貸し込まれている」と表現するのです。
3.本当の支援とは何か
銀行員としておそらく「支援しているつもり」なのでしょう。しかし本当に支援する気があるなら、経営者に対してこう言うべきです。
「このままでは、いずれ返済できなくなり、個人資産まで失いますよ。」
それも、X社のような借入過多になる前、もっと早い段階で伝えないと意味がありません。
「いまどき、そんなことがほんとに起きているの?」と思われたかもしれませんが、現実には、今も地方を中心に、こうした中小企業は少なくありません。
金融庁は以前から「担保や保証に過度に依存せず、企業の事業内容を適切に評価したうえで融資判断を行うように」と促してきました。一見、正論のように聞こえますが、本当に必要なのは、銀行員が経営者に「このまま借入を増やすと、後で苦しむことになりますよ」とパートナーとして忠告するスタンスです。そんな金融機関が現れる気配は、残念ながらありません。
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