金利交渉の出発点は「信用格付に基づく基準金利」の確認
7月31日の金融政策決定会合で、日銀が追加利上げに踏み切りました。
この発表の直後に日経平均株価が大幅に下落し、円高が急伸したのはご承知の通りです。
日銀の追加利上げによって、変動金利の基準金利である短期プライムレート(短プラ)がどのくらい上がったか、確認しておきましょう。
すでに銀行から短プラ改定のお知らせが届いた方も多いと思いますが、実際、多くの金融機関が短プラの引上げ(9月~)を決定しています。
以下はその一例です。
・三菱UFJ銀行:1.475%→1.625%
・群馬銀行:1.975%→2.125%
・京都銀行:2.175%→2.325%
・北海道信金:2.475%→2.625%
短プラは、低コストで資金を調達できるメガバンクがもっとも低く、信用金庫などは高くなります。
群馬銀行と京都銀行の短プラを比べると、京都銀行の方が少し高く設定されていますが、実際に融資を受ける時の金利が「京都>群馬」になるわけではありせん。
実際の借入金利は短プラに「+α」が加算されて決まります。この「+α」は、企業の信用状況や取引関係によって各銀行が独自に決定するため、短プラの基準が多少異なっていても、借入金利が必ずしも「短プラが高い=金利が高い」とはならないのです。
したがって、短プラの着眼点は「引き上げ幅」です。
今回の引き上げ幅は、どの金融機関も一律で+0.15%です。
+0.15%は覚えておくようにしましょう。
短プラは短期融資だけではなく長期融資の基準金利にも用いられています。
今回の利上げで、金融機関から「長期プライムレートが0.15%あがります」という案内があったら、それは業界用語でいう新長期プライムレート(新長プラ)です。
新長プラのベースは短プラです。借入期間が1年超3年未満は短プラ+0.3%、貸出期間が3年以上は短プラ+0.5%、というように、期間が長くなるほど高くなります。
上記の短プラを見て、「ウチの会社の金利はこんなに高くない」と感じた方は、変動金利の契約が「短プラ+α」ではなく、「短プラ-α」になっているか、市場金利に連動するスプレッド貸である可能性が高いです。
銀行から「金利があがる」と言われた時にやるべきこと
日本全体が「金利のある世界」に移行しようとしている中、ある程度、金利がアップするのはやむを得ないでしょう。
ただし、その流れに乗じて、必要以上に金利を引き上げられては困ります。
たとえば、短期プラ+αの借入で0.15%を超える金利アップなどは、黙って見過ごすべきではありません。
人件費などのコストが上昇しているのは銀行も同じです。銀行の担当者は、本部から「可能な限り、コスト上昇分を金利に上乗せせよ」という指令を受けているはずです。
よって、金利アップにあっさり応じてしまうと、次はこれ、その次はこれといった具合に、次々と金利をあげられてしまう恐れがあります。
金利の交渉では、他行の影をチラつかせることも重要ですが、まずは「信用格付に基づく基準金利」を確認することが大切です。
銀行が決算書で貸出先の信用格付を行っていることはご存じですね。
ここでのポイントは、「信用格付に基準金利が紐づいている」という点です。
マトリックスの表を思い浮かべてください。
表のタテ軸には、信用格付の正常先A(超優良)、正常先B(優良)、正常先C(普通)などが並んでいます。
ヨコ軸には、「短プラベースの基準金利」「Tiborベースの基準金利「長期固定金利」「保証協会付融資の基準金利」といった基準金利の項目が並びます。
これが、信用格付に基づく基準金利の一覧表です。
銀行の担当者は、正常先Bなら短プラ+0.3%、正常先Dなら短プラ+1%という具合に、一覧表から基準金利を確認します。
そして、その基準金利を調整して最終的な貸出金利を決めます。
銀行員から金利アップの依頼があったときには、上記の表を念頭に置いて、「当社の信用格付に基づく基準金利は何%あがったのですか?」と質問します。
銀行員によってはモゴモゴとした回答になるかもしれませんが、理屈を共有することによって、必要以上の金利アップを回避することができます。(おそらく銀行との関係も健全なものになると思います)
このような形で、金利にこだわる姿をみせ、引き上げ幅に納得できなければ、他行の話を出す、といった流れがよいと思います。