銀行が再び「個人保証を」と言い出す本当の理由
● 経営者保証(社長の個人保証)を外す方法
● 一度外した個人保証を再び求められたときの対応
● 銀行の狙い
最近は「トランプ関税ショック」の話題でもちきりです。
90日の猶予が決まって株価が爆上げしましたが、この動きはまだ序盤にすぎない模様。
振り返れば、リーマンショックやコロナショックのような“経営ショック”は、意外と頻繁に起きています。
「100年に一度」と言われるような出来事が、実際には10年、あるいは5年に一度起きているようにも感じられます。
こうした不確かな時代において、中小企業の社長が取り組むべきは、「経営者保証を外しておくこと」でしょう。
経営者保証(社長の個人保証)を外すには、会社の財務が健全化している必要があります。
このため、業績が悪化してから銀行に「経営者保証を外してください」とお願いしても、ほとんどの場合、断られます。
そして、保証が残った状態で会社が倒れると、社長は自宅を含めた全財産を失うリスクを抱えることになります。
だからこそ、状況が良いうちに「経営者保証を外してほしい」と、こちらから銀行に申し入れることが大切です。
黙って待っていても、銀行から動いてくれることは、ほとんどないのが現実です。
経営者保証を外す際、銀行は、まず財務内容をチェックします。
債務超過や連続赤字があると即アウトです。
McSS(中小企業経営診断システム)の判定では、「Cランク以上」が一つの目安になるでしょう。
また、法人と個人の関係が分離できているかが重視されます。
特に「役員貸付金」が残っていると、保証の解除が難しくなります。
実際、多くの中小企業での役員貸付金がネックになっています。
早めに解消策を考えておく必要があります。
保証解除の交渉は、まずメインバンクから始めるのが基本です。
通常、サブバンク以下はメインの方針に従うためです。
ただ、逆のパターンもあります。
サブバンクや下位行に保証なしの新規融資を依頼し、その実績をもってメインに保証解除を働きかけるというやり方です。
いずれの方法においても、銀行同士の競争心理に働きかける必要があります。
最近、私が相談を受けた会社の話です。
その会社は、事業承継のタイミングで経営者保証を外しました。
しかしその後、業績が悪化して追加融資を依頼したところ、銀行から「現社長の経営者保証をお願いするかもしれない」と言われました。
一度外した保証を、また付けるように言われる。
こんな話、本当にあるのか?と思うかもしれませんが、実際にあり得ます。
ルール上は可能ですし、保証を外す際に「財務内容が悪化した場合は、再度、経営者保証が必要になります」と釘を刺す銀行もあるくらいです。
銀行の論理は「財務内容が良好だから保証を外した。悪化したら再び保証が必要になる」というものです。
理屈としては分かるのですが、とったり外したりが行われると、経営者の再起を支援する経営者保証ガイドラインの意味がありません。
この場面における銀行の真の狙いは、「社長の個人資産」でしょう。
経営者保証を取り直せば、銀行はイザという時、社長の個人資産を差し押さえることができます。
要するに、銀行は債権保全を図りたいわけです。
上記の社長も、代々相続してきた土地など、多くの資産を保有していました。
だからこそ、銀行は再び経営者保証を求めてきたのです。
こうした場面に出くわしたら、安易に応じず、外部の専門家に相談することをお勧めします。
経営改善計画書を作成して交渉を行えば、保証なしで粘れる可能性もありますので。
経営者保証は一度外したら終わりではありません。
油断しないようにしましょう。