中小企業の経営改善に強い財務参謀│安田順

中小企業の経営改善に強い財務参謀│安田順

【対応地域】 全国(特に、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県、栃木県)

ファクタリングの利用は1回限り。それが無理なら他の手段を

<急拡大するオンライン型ファクタリング>
ファクタリングは、企業の売掛金を一定の手数料で買い取るサービスです。

例えば、売掛金が100万円で手数料が10%の場合、ファクタリング会社に売却すると、手数料を差し引いた90万円が入金されます。

その後、通常通りに売掛金を回収し、ファクタリング会社に100万円を支払います(2社間の契約なので、ファクタリングを行ったことは売掛先には知られません)。

最近、ファクタリングの手続きを完全オンライン化したOLTA(オルタ)という会社が注目を集めています。

OLTAのサービスは以下の通りです。
・面談不要(全ての手続きがネットで完結)
・AIによる迅速な審査で、最短即日振込
・手数料は2~9%で業界トップクラスの安さ
・個人信用情報への登録なし
・保証人不要
・売掛先が倒産しても責任を負わない

創業から日の浅い中小企業やフリーランスが「100万円の請求書を現金化したい」と考える場合、OLTAのサービスは非常に便利です。銀行から100万円の融資を受けることに比べ、手続きが簡単で、手間も少なく済みます。

ファクタリング業界には怪しい会社が少なくありませんが、OLTAの経営陣は野村證券やソニーの出身者です。地方銀行や三菱商事などの大企業とも提携しており、信頼性が高いです。

2022年の中小企業白書も「中小企業の新たな資金調達手法(オルタナティブ・ファイナンス)」としてOLTAを紹介しています。

こうした信頼性と利便性を背景に、OLTAは2022年10月に累計申込金額1,000億円を突破し、現在も急成長を続けています。

オンライン・ファクタリング市場の潜在規模は3兆円と言われているので、今後さらに普及が進むのは間違いありません。

<ファクタリングの問題点>
一方で、ファクタリングには、泥沼にはまりやすいという問題があります。

ファクタリングは「売上の先食い」であるため、慢性的に資金繰りが悪い会社が利用すると、翌月も資金が足らなくなり、再度、ファクタリングを申し込むことになります。

例えば、毎月100万円の売掛金を10%の手数料でファクタリングしていると、年間の手数料は120万円に達し、実質的に120%の金利を負担することになります。

この多額の手数料が利益を吹き飛ばし、利用者は窮地に追い込まれていきます。

利用者が依存すればするほど、ファクタリング業者は儲かります。実際、吸血鬼のように、弱った中小企業から資金を吸い取る業者も存在します。(ファクタリングは融資ではなく債権譲渡なので利息制限法が適用されず、手数料に上限がない)

業界に詳しい方から聞いた話では、年商10~20億の会社がファクタリングにはまる場合も珍しくないとのこと。

その多くは、滞納した消費税・社会保険料の支払いのためにファクタリングを使った、というケースです。

そういう会社は、より安い手数料を求めて、複数のファクタリング会社を渡り歩くことになるようです。

<代替策としての売掛金担保融資>
ファクタリングを利用する際のポイントは「利用が1回で済むかどうか」です。

それが守れない会社に対し、私なら「仕入先に分割返済をお願いしたらどうですか」と助言するかもしれません。

それに加えて、ノンバンクの売掛金担保融資を検討します。

売掛金担保融資は、その名の通り売掛金を担保とする融資で、ヤマトクレジットファイナンスやマイナビブリッジなどのノンバンクが主に取り扱っています。

融資期間は1年で、その契約を毎年、更新する形です。融資残高に対して数%の毎月返済が必要になりますが、それ以外は銀行の短期継続融資に近い内容です。

金利は手数料込みで3~15%とされており、10%程度で貸し出されることが多いようです。銀行融資よりは高いものの、ファクタリングほどの負担はありません。

私自身は、リスケにより銀行融資がNGになった中小企業2社で売掛金担保融資を利用した経験があります。

両社とも3~4年の利用後、銀行融資で借り換えました。銀行融資が再開するまでの「つなぎ」として効果的に活用できたのです。

売掛金担保の仕組みを丁寧に説明すれば、銀行がノンバンクの融資を極端に問題視することはありません。(上記2社は大手企業の系列会社なので、なおらさらでしょう)

ただし、どんな企業でも利用できるわけではなく、年商3億円以上や継続取引先15社以上といった条件があります。

また、債権譲渡登記が必要なため、売掛先に知られるリスクはゼロではありません。債権譲渡登記の有無は法務局に申請すれば確認可能です。

リスケなどで銀行融資が受けられなくなった場合は、安易にファクタリングを利用せず、他の手段も十分に検討するようにしましょう。

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