銀行のリスケ対応が厳しくなってきています
● 協調支援型特別保証制度のメリット
● 返済増額や金利引上げ要請など、銀行のリスケ対応が厳しくなってきた
● リスケ交渉における信用保証協会の立ち位置
● ゼロは認めない!月1万円の返済を要求する銀行員の気落ち
2025年3月から取扱いが始まった「協調支援型特別保証制度」。
この制度の特徴は、信用保証協会の融資を利用する際に、1割以上のプロパー融資の実行が条件になる点です。
プロパー融資は、金融機関からの信用の証であり、「保証料がかからない」「保証枠を温存できる」といったメリットもあります。
よって、「最近プロパーで借りることができていない」「そもそもプロパー融資を受けたことがない」という会社は、この制度を使えないかどうか、金融機関に相談してみるとよいでしょう。
ゼロゼロ融資の残高があっても、一般保証枠(運転資金8,000万円)が空いていれば、この制度は活用できます。
さらに保証料の補助も受けられます。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。
さて、本題です。
最近、リスケの延長を銀行が渋ったり、返済や金利に条件を付けてくるケースが目立ってきました。
たとえば、コロナ融資の返済を1年前からリスケ(元金返済ゼロに変更)していたA社のケース。
A社は、有望なビジネスに取り組んでいますが、技術者の人件費がかさみ、なかなか赤字から脱却できない。
やむを得ず、さらに1年間のリスケをX銀行(地銀)に申し込んだところ、キレ気味の担当者から、次のような言葉を浴びせられたそうです。
「あなた、この1年間、何やってたの?」
「返済ゼロをもう1年とか、そんなに甘いもんじゃないんだよ」
「今度は絶対に返済を開始してもらいますよ」
驚いた社長(30代前半)は次のように反論しました。
「Y銀行さんと公庫さんは、返済ゼロの延長を認めてくれましたよ。」
「そもそもコロナ融資は保証協会の100%保証で、御行はリスクを負ってないじゃないですか。」
X銀行「何か勘違いしていませんか?貸しているのは当行です。リスケに応じるかどうかを決めるのも当行です。」
社長「じゃあ、保証協会に直接、相談します。」
X銀行「どうぞ、ご自由に。当行の結論は変わりませんので」
この話を聞いた私は、社長に対して次のようにアドバイスしました。
●念のため、信用保証協会に事業計画を持参して、状況を説明しておきましょう。
●ただし、保証協会の担当者の前で、X銀行への恨みつらみを言わないこと。
●社長が「誠実な人物」であることを伝えにいくのが、保証協会訪問の主目的です。(このことが次回以降のリスケ交渉にも効いてきます)
社長は私の助言どおり、県の信用保証協会を訪問し、事業計画を説明しました。
すると協会の担当者がその場でX銀行に電話をかけてくれたそうです。
しかし、そこでもX銀行は「返済開始」の一点張り。
協会の担当者は苦笑いを浮かべ、「仕方ありませんね」と言って面談は終わったそうです。
ここで、保証協会の立ち位置(動機)を整理しておきます。
保証協会には、第一に「銀行にリスケに応じてもらいたい」という動機があります。
リスケを断られると代位弁済になり、保証協会が損失を被るからです。
第二に、「銀行にはある程度の債権回収姿勢を示してほしい」という動機もあります。
リスケ案件を放置すると、最終的に不良債権が積み上がり、そのツケを協会がかぶることになるからです。
つまり、X銀行が「返済開始」にこだわる姿勢は、保証協会にとっても首肯しうるものなのです。
とはいえ、代位弁済を避けたい保証協会の手前、銀行が極端に無理な返済を要求してくることはありません。
実際、このリスケ交渉も、「社長の財布から毎月1万円をX銀行に入金する」という形で決着しました。
月1万円を払ったところで、借入金はほとんど減りません。
それでも、X銀行の担当者としては「経営者の自覚を促すために、月1万円の返済を約束させた」と上司に報告することができます。
銀行では、条件変更の稟議でも「銀行側に有利な条件を引き出した」と見なされれば、担当者の評価が上がるのです。
私は社長に、「月1万円の返済のことで揉めるのは時間のムダです。さっさと応じて、売上の確保に集中しましょう」と伝えました。
この事例からも分かるように、銀行のリスケ対応は以前よりも厳しくなってきています。(厳しく対応しろ!という号令が出ているのでしょう)
最近では、リスケに応じる代わりに「金利の引き上げ」を求められるケースも多くなっています。
リスケ申請時の金利引上げに安易に応じてしまうと、
「利払いで利益が出ない ⇒ 返済が進まない ⇒ 利払いでさらに利益が出ない」
という“ゾンビ体質”に陥ります。
金利引上げ要請には、実現可能性の高い経営改善計画書で対抗するしかありません。